つらつらとMAZDA

マツダに関する備忘録的ブログ。

欧州で予定されているトヨタ・ヤリスHVのOEM受給と次期MAZDA2について考えてみた。

先日、マツダの2021年3月期・第2四半期決算で発表された「欧州でトヨタ・ヤリスのOEM受給」という話。

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(画像 NetCarShow.com)

直6エンジンの実物写真と同じくらい大きな反響を呼んでいるこの話題について考えてみました(TOP画像は2014年に発表された現行MAZDA2のコンセプトカー”HAZUMI”)

 

欧州でトヨタ・ヤリスHVを今後2年以内にOEM受給して販売するという話は11月9日に発表された2021年3月期・第2四半期決算の場で初公表。

現行MAZDA2(デミオ)が発売開始されてからまもなく7年目を迎えるので次期型はどうなる?という考えも浮かんでいた中での話だったのでかなり大きな反響を呼びました。

対象地域が”欧州”と記載されてはいますが、日本を含む他の導入地域がどのような対応になるのかも含めてかなり気になるので想像も交えながらいろいろ考えてみます。

 

まずはマツダから発表された「欧州でトヨタ・ヤリスHVをOEM受給する理由」に関してですが、これに関しては中国新聞の記事で取り上げられています。

理由①:CAFE規制による企業平均CO2排出量低減の必要性

マツダはすでに平均値を下げるのに有利なMX-30(EV)を欧州で発売開始していますが、今後さらに規制が厳しくなる方向が決まっているのでさらにもう一手が必要。

OEM受給予定のトヨタ・ヤリスHVは世界でもTOPと言える燃費と環境性能を誇るので貢献度はかなり高いと言えます。

理由②:ヤリスHVはフランスでも生産されているので為替変動に対する耐性が高い。

記事の中で「ヤリスのHVは競争力が高い。フランスで造られ(為替変動への)耐性もある」「最も小さい車で収益的にも日本から持っていくのは苦しい」という藤原副社長の証言が掲載されています。

池田直渡さんの記事でも度々触れられていますが、マツダは値引き抑制などによって利益を大幅に改善しているにも関わらず為替差損の影響を非常に受けてる状態が続いているのでその対策という意味もあると思われます。

欧州に生産拠点が無いマツダにとっては尚更大きなメリットになります。

中国新聞の記事ではこの2つの理由が掲載されていますが、せっかくなのでマツダが公開している資料も深掘りするといくつか今回の決定に至った理由かもしれないポイントが・・・。

 

ポイント①:現行MAZDA2のグローバル販売台数と欧州での販売台数。

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(画像 MAZDA)

こちらはマツダの会社概況2020に掲載されている2019年度のMAZDA2地域別生産・販売台数。

欧州での2019年度販売台数はグローバル全体の約4分の1弱を占める「31,603台」でなかなかの割合を占めていますが、この台数が欧州ではどれくらいの規模になるのか他車種と比べてみると・・・。

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(画像 MAZDA)

1位:CX-5(82,429台)

2位:CX-3(45,469台)

3位:MAZDA3(37,598台)

4位:MAZDA2(31,603台)

5位:CX-30(29,451台)※2019年9月発売開始なので約7か月での実績

6位:MAZDA6(23,656台)

7位:MX-5(11,340台)

MAZDA2のようなBセグメント車はメーカー問わず価格帯がリーズナブルで販売台数も上位になるのが一般的ですが、欧州におけるマツダはMAZDA2よりセグメント・価格帯が上の車種が売れ筋で、CX-5が最量販車種となっています。

(上の資料を見ると分かりますが、日本ではMAZDA2が最量販車種でMAZDA3⇒CX-5⇒CX-30の順番)

登場から年数が経った事で販売が落ち着いたという事やSUV人気という理由もあるかもしれませんが、コンパクトカーというイメージからすると販売台数が少ない気もします。

 

ポイント②:今後の中期経営計画における欧州地域の方針は「質的成長」

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(画像 MAZDA)

先日発表された決算で一部見直しを含めた中期経営計画が発表されましたが、その中で示された欧州地域の方針は”量的成長では無く質的成長を目指す”という内容。

これに対して、マツダが最重要地域と位置付けている北米と中国はマーケット自体の大きさや今後の成長も見越して”質的成長と量的成長の両立”を目指す方針。

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(画像 MAZDA)

これらの資料から「過剰な値引きを抑えてブランド価値で選んでもらう方針は地域共通、ただし欧州地域は販売台数増を目指していない or あまり見込んでいない」と見る事が出来るのに加えて、欧州地域の資料には「高い残価」という項目もわざわざ記載されているので値引きを抑えて1台当たりの利益率を上げる事をより重要視していくことも読み取れます。

利益率を確保しやすいのは基本的にサイズが大きめの車になるので、欧州で今後重要になる車は現在も売れ筋であるCX-5・MAZDA3・CX-30、さらに登場が噂されているラージ群モデル第一弾のSUVと予想(直6エンジンにディーゼルも含まれてるのはそれも理由のはず)

 

上記に加えて、個人的に頭の中で浮かんだヤリスHVがOEM受給される理由も挙げると・・・・

 

ポイント③:次期MAZDA2を全て自社開発する場合、欧州向けと日本以外の地域向けで車体・デザインを作り分ける必要性が高いかも?

日本では「Bセグメントカー=5ナンバー」のイメージが今でも強いですが、欧州メーカーのBセグメントカーはサイスが少しずつ大きくなる傾向で、以前は貴重な5ナンバーサイズだったフォルクスワーゲン・ポロやBMW MINIも現行モデルは3ナンバーサイズになっています。

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(画像 NetCarShow.com)

この流れの中で5ナンバーサイズも頭に入れないといけない日本メーカーでは「トヨタ・ヤリス」「スズキ・スイフト」のように日本仕様だけ全幅を5ナンバーサイズに抑えて欧州などの海外仕様は3ナンバーサイズに造り分ける事例や、日産のように欧州と日本で完全に別モデルを導入する事例が出てきています。

トヨタ・ヤリス欧州仕様

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(画像 NetCarShow.com)

全幅:1745mm(日本仕様は1695mm)

全高:1470mm(日本仕様は1500~1515mm)

ホイールベース:2560mm(日本仕様は2550mm)

ホイール5穴仕様(日本仕様は4穴)

電動パーキングブレーキ採用(日本仕様は未設定)

 ・スズキ・スイフト欧州仕様

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(画像 NetCarShow.com)

全幅:1735mm(日本仕様は1695mm・スイフトスポーツは欧州仕様と共通)

インドとタイで製造されているスイフトも全幅1735mmの模様。

・日産

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(画像 NISSAN)

欧州市場は「マイクラ(3ナンバーサイズ)」、日本市場は「ノート(5ナンバーサイズ)」で完全に差別化。

 ・ホンダ

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(画像 NetCarShow.com)

フィット(欧州名:JAZZ)は日本・欧州でサイズが共通ですが、標準仕様が5ナンバーサイズなのに対してクロスター(CROSSTAR)は3ナンバーサイズ。

フィット(JAZZ)のみ日本と欧州で共通化されていますが、それ以外は欧州と日本で別モデルを設定したりサイズを作り分けてる状態です。

あくまで想像ですが、次期MAZDA2を開発する場合も日本と欧州でサイズを作り分けるのが理想ではあるものの、先に挙げた理由やポイントを含めた総合的判断でヤリスHVを欧州でOEM受給するのが最適と判断されたのかもしれません。

 

これまで挙げた理由やポイントをまとめると・・・・

・欧州CAFE規制対応や為替対応はマツダにとって重要課題。

・元々コンパクトカーは開発コストが限られる上に電動化やコネクティッド対応、さらに地域毎に作り分けまで行う場合はさらに開発コストが厳しくなる可能性。

・欧州でのMAZDA2販売台数はそこそこレベルという状況に加えて全て輸入なので為替面でも不利。

・欧州市場は質的成長の方針なので1台あたりの利益率がより重要。

マツダのブランド戦略も考えると最重要車種はCX-5クラス近辺の車種?

・限られるマツダの開発リソースは最重要車種へ集中させるのが得策 ?

 

これらの内容も踏まえた上で次期MAZDA2がどうなるか予想すると・・・。

・欧州市場はヤリスHVをベースに内外装デザインをマツダ独自に仕立てたモデルを次期MAZDA2として販売。

 

・欧州以外の日本や東南アジア等向けの次期MAZDA2は引き続きマツダ独自開発、5ナンバーサイズを維持して進化。

MAZDA2は国内外にあるマツダの工場(日本・メキシコ・タイ)にとっても稼働率等の面で重要になるモデルなので、さすがに欧州以外のMAZDA2までヤリスのOEMになる可能性は低いと考えました。

考え方によっては日本市場のトレンドにより合わせたモデルになる可能性もあるという見方も出来るかもしれません。

 

このブログではお決まりですが、あくまで個人的予想なので実際は全く違う可能性もある事はご了承ください(笑)

 

欧州におけるヤリスHVのOEM受給は2022年までに開始されるようなので、早ければ来年にも実車が披露されると思われます。

場合によってはマツダ独自開発の次期MAZDA2もほぼ同じ時期に発表される事もあるかもしれないので今後の情報に注目ですね(来年は東京モーターショーも予定されてますし・・・)