今月に入ってから国内外で気になる内容が出てきているマツダの特許関連情報ですが、今週は発電用ロータリーエンジンに関する特許出願が日本で公開されました。
〇特許情報プラットフォーム
今回取り上げるのは12月13日付で公開された発電用ロータリーエンジンに関係するマツダの特許出願4件。
①「ロータリーエンジンの制御装置」
https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2022-183648
〇資料に記載されている特許の目的
ロータリエンジンが逆回転すると、サイドシールの端が、サイドハウジングに形成された吸気ポートの開口部と干渉し、サイドシールが破損してしまう恐れがある。サイドシールの破損は、ロータリエンジンの燃費性能及びエミッション性能を低下させる。ロータリエンジンが逆回転した場合、ロータリエンジンを速やかに停止することが望ましい。
ロータリエンジンの逆回転を速やかに止めるためには、シャフトが逆回転したことを速やかに検出することが必要になる。しかしながら、シャフトが逆回転方向に微少角度だけ回転した場合、及び/又は、シャフトが逆回転方向に微少時間だけ回転した場合に、シャフトが逆回転をしたと判定することは、誤判定を招きやすい。
ここに開示する技術は、ロータリエンジンの逆回転に伴う破損の抑制と、ロータリエンジンの逆回転の誤判定の抑制と、を両立する。
②「電動車両の制御装置」
https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2022-183654
〇資料に記載されている特許の目的
エンジンを始動する際にエンジンの回転位置が適正でないと、エンジンに供給した燃料が着火しなかったり、始動完了までに時間がかかったりする。
そこで、エンジンを始動する前に、エンジンの始動に用いるモータを使って、エンジンの回転位置を適正な位置に調整することが考えられる。
しかしながら、エンジンの始動前はバッテリのSOCが低下しているため、回転位置の調整のために、バッテリの電力を消費することは好ましくない。
ここに開示する技術は、エンジンの回転位置を適正な位置にして、エンジンを始動する。
③「電動自動車の制御装置」
https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2022-183655
〇資料に記載されている特許の目的
エンジンを始動する際に、エンジンの回転位置を始動に適した回転位置にするためには、エンジンの回転位置が正確に把握されなければならない。しかしながら、エンジンのコントローラのサンプリング周波数は低いため、エンジンが停止する直前のエンジンの回転数が低下した状態で、エンジンの回転位置を正確に把握することは困難である。
ここに開示する技術は、エンジンの回転位置を始動に適した回転位置にする。
④「電動車両の制御装置」
https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2022-183657
〇資料に記載されている特許の目的
エンジンの運転回転数に応じて、吸気充填効率が最大となる吸気ポートの閉じタイミングが変わる。バルブタイミング可変機構は、一般的に、吸気充填効率が最大となるように、吸気ポートの閉じタイミングを変えることができる。
ところが、エンジンのレイアウト、又は、エンジンの形式に依っては、バルブタイミング可変機構を使って、吸気ポートの閉じタイミングを変えることができない場合もある。
一例としてロータリエンジンは、その構造上、バルブタイミング可変機構を取り付けることができない。ロータリエンジンは、吸気ポートの閉じタイミングを変えることが難しい。
ここに開示する技術は、バルブタイミング可変機構を使わずに、吸気ポートの閉じタイミングを変える。
今回新たに公開された内容は以上の4件。
これまで量産車に搭載されていたロータリーエンジンは駆動用でアイドリングストップも無しでしたが、今回公開された特許出願は作動と停止を頻繁に繰り返す発電用という事を考慮した内容となっています。
さらに今回の内容は4件ともインジェクターがローターハウジングの上部に備わっているので「直噴式」となっているのも特徴。
直噴ロータリーエンジンは「水素ロータリーエンジン」と2007年東京モーターショーで参考展示された「16X」で採用例がありますが、一般向けの量産車ではまだ採用例がありません。
これまで取り上げたロータリーエンジンに関する特許でも直噴式と従来のポート噴射式を採用した内容がほぼ半数ずつという印象なので、まもなく発表されるマルチxEV(MX-30 R-EV)ではどのような構成になっているのか気になるところ・・・。
ちなみに今週はすでに発電用ロータリーエンジン関連以外にも気になる特許出願が公開されているので、こちらも改めてブログで取り上げたいと思います。