今週新たに公開されたマツダの特許は28件。
その中からかなり不思議な内容があるので取り上げます。
まずは公開された特許出願の内容をざっと並べていきます。
今回はかなり内容が難しいのでいつも以上に至らない点もあるかと思いますがご了承ください(汗)
〇4件の「ウェルビーイング値推定システム」という内容。
特開2020-67844 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67845 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67846 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67847 | 知財ポータル「IP Force」
”ウェルビーイング値”という聞きなれないフレーズが出ていますが特許資料にはこのように書かれています(一部引用)
近年「ウェルビーイング(well-being)」についての研究が進められている。「ウェルビーイング」は、人が単に健康である(病気でない)ということではなく、人が身体的,精神的,社会的に良好な状態であることを意味する。
感情状態又は精神状態に関連するユーザのウェルビーイングの程度(ウェルビーイング値)をユーザが社会活動(イベント参加、車両運転等)を行う中で精度よく推定することは難しかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものでありユーザの精神的な活性度としてのウェルビーイング値の推定精度が向上されたウェルビーイング値推定システムを提供することを目的としている。
さらに掲載されている図の説明では・・・
まず最上段左の図はライフアクティブシステムの概念図、最上段右の図はライフアクティブシステムの構成図である。
(ライフアクティブを「LA」、ウェルビーイングを「WB」と記載する場合がある)
本実施形態においてウェルビーイングとはユーザが自己の否定的感情を打ち消し、自己実現感を獲得し、社会(他者)との関係において自己肯定感を獲得することを意味する。
自己肯定感は、社会に必要とされ、且つ、社会に役立っていると感じることを含む。
また、ライフアクティブとはユーザがカーライフ(車両の所有・運転)を通じて社会と関わり合うことにより、ウェルビーイングの程度(WB値)を高める活動(WB活動)を継続的に行う状態を意味する。
そして、ユーザがライフアクティブな状態で生活することにより、人生においてWB活動又はWB体験を累積していくことを「ウェルエージング(well-aging)」と定義することができる。
なお、継続的にWB体験を累積することにより、ユーザはより高次なWB状態に到達可能と考えられる。
本実施形態のLAシステムは、ユーザがイベントへ参加してWB活動を行うことに対して、経済的な価値(仮想通貨)が付与されるように構成されている。
この仮想通貨は、法定通貨と所定の交換率で交換可能であり、ユーザはイベントへの参加により、身体的,精神的,社会的な面においてWB値を高めることができると共に、経済的な面においてイベントに参加するインセンティブが与えられる。
(イベント例:旅行ツアー、ネイチャーツアー、ミステリーツアー、ボランティア活動など)
イベント提供者は、協力者の人的・資金的な協力の下でイベントを企画・実現させる。
(協力者は、イベント開催地の業者、地域の人々、資金提供者など)
ユーザーは、イベントに関連して種々の費用を支出する(参加費、ガソリン代、食費等)。イベント提供者及び協力者は、ユーザーの支出により運営費を回収することができる。
本実施形態のLAシステムでは、イベントを介してコミュニティが形成され、コミュニティ内で資金が循環することで種々のイベントが繰返し開催されるように構成されている。
カーライフによって心身の健康を促進することと関連イベントの継続的な開催を両立することを狙った内容になっています。
”仮想通貨”というキーワードが出てきましたが、これに関するマツダの特許出願も同時に公開されています。
〇「仮想通貨管理システム」と「仮想通貨管理装置及び仮想通貨管理方法」という内容
特開2020-67848 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67849 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67850 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67851 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67852 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67853 | 知財ポータル「IP Force」
特開2020-67854 | 知財ポータル「IP Force」
(各リンク先の全ての説明図を張ると収拾がつかないのでピックアップして載せます)
記載されている特許の目的をピックアップすると・・・
・ウェルビーイング値を高める仮想通貨管理システムを提供すること
・ユーザーはイベント参加に加えてSNS等を通じてイベントの感想や感謝を送信することで仮想通貨を獲得
・ユーザーの反応データを客観的に分析した上でイベント関係者へ仮想通貨を付与
・これによってイベント関係者がより良いイベントにしようという動機にも
・第三者による仮想通貨の購入(投資)も含めてイベントの活性化やイベントが開催される地域の活性化などを実現することが可能
このような記載がありました。
ウェルビーイングと仮想通貨を関連付けて調べてみるとこのような記事が。
リンク先の後半に差し掛かるところにこのような文章が(一部引用)
最近だとテレマティクス保険などが話題になっています。
たとえば、急ブレーキをかけがちだとか、法的には違反していないけれどスピードを出しすぎだといった法律で細かく規制することはできないときに、こうすれば保険料が上がる、もしくは下がるということをカーナビの画面で適宜注意するメッセージを出してインセンティブによって働きかけ、人を安全運転するドライバーへと導きます。
日本ではあまり知られていませんが、欧米では国をあげて後押しをしています。
ほかにも自動車業界でシボレー社が IBM Watson という人工知能と協力して、SNS でポジティブな投稿を行っていた人に対して、ガソリンをタダで提供しました。
ポジティブな心理で運転した方が安全運転で間違いがない、という考えが徐々に進んできています。
海外ではSNSでポジティブな投稿をしたユーザーに対してガソリンをタダで提供したなんて事例もあるようです。
今回の特許出願の内容で思い出すのはマツダが発表した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の一部分。
この中で”コネクティビリティ”と”人”に関する取り組みに関して触れているのですが・・・。
「コネクティビティ技術によって、人と人・社会をつなげることで、社会構造の変化に伴う人と人とのつながりの希薄化など社会的な課題解決に貢献します。」
「 人間中心の考え方でクルマとともに豊かな人生、カーライフを提供し、お客さまの心と体を元気にする価値」
「「走る歓び」を感じるクルマを通じて、地球を守り、社会を豊かにすることで、人々に心の充足を提供し、心を健康にします」
今回の特許出願はこれらの一文と重なる内容なのではないでしょうか?
「モノよりコト」という言葉が言われてる時代なので今後はいいクルマを売るだけでなく、それによって得られる価値や体験がより重要になると個人的に思っています。
あくまで特許出願の内容なので実際のサービスとして活用されるかはまだ分かりませんが、マツダが”コト”についてもいろいろ考えてるのは間違い無さそうですね。
GWに入ってるので来週は特許関連の情報が出てこない可能性もありますが、今後も注目していきたいと思います♪