今週新たに公開されたマツダが出願中の特許は57件。
件数が多い事に加えて中身もかなり濃いので「前編」「後編」と分けて取り上げたいと思います。
前編では「ロータリーエンジン」に関する内容をピックアップ。
まずは今月7日に欧州で一足先に情報公開されていた「駆動用3ローターエンジン搭載のハイブリッド車」に関する特許出願が日本でも公開されました。
英語では分からない部分もあったので改めてチェックしたいと思います。
(欧州で公開された特許出願をとりあげたブログ)
〇1件目(出願番号2020113719)
〇資料に記載されている特許の目的。
従来のハイブリッド型の車両においては、インバータをモータの上に固定した構造が採用されることが多かった。これは、モータとインバータとの間の距離を短くし、モータとインバータとの間の接続配線であるバスバーの長さをできるだけ短くしようとするためである。しかしながら、エンジンとモータとをユニット化してなる駆動ユニットを採用する車両において、モータの上など駆動ユニットに対して直にインバータを固定することはできるだけ避けることが望ましい。これは、エンジンとモータとを有する駆動ユニットを採用する車両において、仮にインバータをモータの上に固定した場合には、エンジンの駆動時に生じる振動が直接インバータに伝わる。この振動によりインバータの電気部品がダメージを受け、場合によっては故障の原因となることが考えられるからである。
なお、振動に対して強い部品を用いてインバータを構成すれば、モータの上にインバータを固定する構造を採用してもインバータの故障を回避できるとも考えられるが、インバータの製造コストの上昇を招くことになり、このような構造を採用することは難しい。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンとモータとのユニット化を図りながら、製造コストの上昇を抑制しつつインバータの故障を抑制することができる車両を提供することを目的とする。
〇2件目(出願番号2020113745)
〇資料に記載されている特許の目的
(近年普及してきた)ハイブリッド型の車両においても車両運動性能の更なる向上が求められている。車両の運動性能を高めようとする場合にはエンジンおよびモータからなる駆動ユニットを車両における中央に近い領域に配置することが有効である。このように駆動ユニットを配置することにより、車両が旋回し易くなり車両運動性能の向上を図ることができる。
しかしながら、車両における中央に近い領域には乗員スペースがあるので駆動ユニットを搭載するためのスペースは限られている。このため、車両運動性能の向上を図るために駆動ユニットを車両の中央に近い領域に配置するためには、駆動ユニットの小型化を図ることが必要となる。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットの小型化を図ることで車両運動性能が高い車両を提供することを目的とする。
〇3件目(出願番号2020113720)
〇資料に記載されている特許の目的。
本発明は、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットを備えながら、駆動ユニットからインバータへの振動の伝達を抑制し、且つ、モータとインバータの冷却性能を確保することができる車両を提供することを目的とする。
基本的に説明図や車両構成は欧州で公開された資料と同じです。
〇基本的な車両構成
・駆動用3ローターエンジンを採用したハイブリッド車
・フロントにインホイールモーター搭載。
しかし、日本語で記載された資料を改めてチェックすると"エンジンオイルを貯留するためのオイルタンクを設けている"という説明があるのでこの3ローターエンジンは「ドライサンプシステム」の採用を視野に入れてる事が分かりました。
ウェットサンプとドライサンプの違いは?オイルをオイルパンに溜めるか別体のオイルタンクから供給するかの違い【バイク用語辞典:潤滑編】 | clicccar.com
ドライサンプを採用する理由としては特許の目的でも触れたエンジンやモーターを合わせた駆動ユニットのコンパクト化がありますが、オイルパンを薄くする事でさらなる低重心化とスポーツカーらしい低いボンネットを実現するという目的もあるかもしれませんね。
さらに今週は海外でもまだ出願公開されて無い新しい内容が2件出てきています。
「題名:ロータリーエンジン」
・出願番号2020114268
・出願番号2020114269
(説明図は2件共通)
〇資料に記載されている特許の目的
(1件目)
本発明は、ウォータポンプ及びオイルポンプをロータハウジング近傍に配置してコンパクトに構成することができるロータリエンジンを提供することを課題とする。
(2件目)
本発明は、エキセントリックシャフトによって燃料ポンプ及びウォータポンプが駆動されるロータリエンジンにおいて、燃料ポンプ及びウォータポンプの駆動ロスを抑制することを課題とする。
こちらは2ローターエンジンですが、先に取り上げた3ローターエンジンと同様にドライサンプシステムを採用している事に加えて直噴になっているのが特徴です。
あと、3ローターエンジンの特許ではスパークプラグの本数が「ローター毎に1つ」となっていましたが、こちらの2ローターエンジンでは「2つ」という違いがあるのもポイント。
FD RX-7・RX-8に搭載されていた13Bでは2本だったスパークプラグですが、このあたりはローター数も含めて色々検討しているのだと推測されますね。
ロータリーエンジン関する新たな特許出願をまとめた前編は以上となります。
後編ではこれ以外で気になる内容をピックアップしていく予定なのでブログ公開までしばらくお待ちくださいませ・・・。