ここ数週間新たな内容が公開されて無かったマツダの特許出願ですが、今週は月曜日に2件公開。
ただ、2件ともかなり注目すべき内容なので詳しく取り上げます。
本日新たに公開されたのは「直噴型ロータリーエンジン」に関する内容2件。
〇1件目:特開2021-188584 | 知財ポータル「IP Force」
〇2件目:特開2021-188585 | 知財ポータル「IP Force」
(説明図は2件とも共通)
・全体構成
・ローターのリセス(くぼみ)について。
・インジェクターについて
・二段燃焼の一例を示すグラフ図
〇資料に記載されている特許の目的
(1件目)
ロータリエンジンでは、膨張行程中に燃焼室のトレーリング側の未燃混合気がリーディング側に流れることにより、主燃焼ピーク後に熱発生率が高い状態が暫時続く問題、所謂二段燃焼が発生する問題が知られている。この二段燃焼は、その二段目の燃焼による熱発生が燃焼後期になるため、冷却損失及び排気損失を増大させる一因となっている。
本発明は上記二段燃焼を抑制することを課題として、インジェクタ(燃料噴射弁)から噴射された燃料がロータ外周面の容積の大きいリーディング側凹部に多く供給されるようにする。
(2件目)
本発明者が、ロータリエンジンの二段燃焼について実験を踏まえて検討したところ次のことがわかった。
すなわち、インジェクタから噴射した燃料がロータに衝突して燃焼室のトレーリング側に反射し、その結果、該トレーリング側に未燃混合気が残り易くなることが二段燃焼の一因になっている。
そこで、本発明は、インジェクタを多噴孔型とし、燃焼室のトレーリング側に向かって噴射される燃料のペネトレーションを弱める(短くする)ようにした。
今回の資料に使用用途は記載されていませんが、2ローターという構成から考えると発電用では無く"駆動用"が有力そう・・・。
また、使用燃料に関しても記述が無いのでガソリンだけでなく水素の活用も視野に入れてる可能性もありそうですね。
非対称のリセスを採用したロータリーエンジンに関する特許出願は2020年1月にも公開されていましたが、この時の内容は直噴式ではありませんでした。
今回出てきた2件の特許出願は方向性が似てる印象なのでより研究・解析が進んで直噴式を採用する事を視野にいれたのかもしれません。
ちなみに、直噴システムは「水素ロータリーエンジン」と2007年東京モーターショーで参考展示された「16X」で採用例がありますが、一般向けではまだ採用例がありません。
さらに、2013年に公開されたレンジエクステンダーのプロトタイプに搭載された発電用ロータリーエンジンも直噴では無く従来と同じポート噴射型でした。
ロータリーエンジン発電で航続距離を2倍にした「マツダ RE レンジエクステンダー」 - Car Watch
マツダは2022年に発電用ロータリーエンジンを採用したマルチxEVを導入開始する予定ですが、こちらはどのような構成になるのか気になるところ・・・。
マルチxEV用ロータリーエンジンは1ローターになる見込みですが、今回出てきた2ローターの新型ロータリーエンジンを搭載したモデルの登場にも期待したいところです。
今週は木曜日にも新しい特許出願が公開される可能性があるので引き続き注目しておきたいと思います。