今週新たに公開されたマツダが出願中の特許は7件。
少ない件数ですが気になる内容があったので紹介したいと思います。
今週取り上げるのは「エンジンシステム」という題名の内容。
https://ipforce.jp/patent-jp-P_A1-2022-175421
〇資料に記載されている特許の目的
エンジンの燃焼制御において燃焼室の中の温度(筒内温度)は、重要な因子の1つである。例えば、圧縮着火燃焼を安定して制御するためには、筒内温度を火花点火燃焼よりも高温で、しかも精度高く制御することが必要になる。
また、エンジンの負荷に応じて燃焼室の中で発生する熱量が変化するため、筒内温度も変化する。
その筒内温度の制御において燃焼室の壁温は重要な因子の1つである。エンジンの負荷が変わることに対して応答性良く、燃焼室の壁温を調整することが求められる。
この点に関して従来の冷却装置は、冷却水の温度が高くなると、ラジエータ経路を流れる冷却水の流量を増やすことによって冷却水の温度を下げる。
しかし、冷却水の熱容量が大きいため冷却水の温度を変えるには長い時間が必要である。冷却水の温度調整によって、エンジンの負荷が変わることに対して応答性良く、燃焼室の壁温を調整することは難しい。
ここに開示する技術は、エンジンの負荷に応じて、燃焼室の壁温を高い応答性で調整する。
こちらは点火プラグが装備されてるのでガソリンエンジンに関する内容ですが、注目ポイントはHCCI・SPCCIに加えて「MPCI(Multiple Premixed fuel injection Compression Ignition)」という燃焼方式も登場している点。
HCCI燃焼とSPCCI燃焼はこれまでマツダのエンジン開発やSKYACTIV-Xでおなじみとなりましたが、MPCI燃焼は聞き慣れないフレーズですね・・・。
素人なりに調べてみるとMPCIは日本語で「ガソリンマルチプル予混合圧縮着火」や「多重予混合圧縮点火」という名称で、どうやらオクタン価が低い燃料でHCCIに近い圧縮自己着火を実現させる方式のようです。
そして、今回の特許資料にも「点火プラグを使わない点はHCCIと同じだが、分割噴射を行うのでシリンダー内の混合気が不均質になる点は異なる」というニュアンスの事が書かれています。
かなり専門的な内容を素人なりに解釈したので間違ってる可能性もありますが、マツダはSKYACTIV-Xや直6 SKYACTIV-D 3.3に続く"3rdステップ"の課題として遮熱・断熱性能の向上を挙げており、今回の特許も燃焼室の壁温調整に関する内容となっているので、次世代ガソリンエンジンに関係する特許の可能性がかなり高そうです。
マツダは先日公表した「中期経営計画のアップデート」で2030年のEV生産比率を25%~40%と設定しましたが、一方で残り6割程度は何らかの形で内燃機関が搭載される事になるので次世代エンジンに向けた研究開発は必須とも言えます。
約2年前の情報ではありますが、マツダに関する情報でおなじみの中国新聞は「第3世代のガソリンエンジンは2025年頃に投入予定」という報道も出ていました。
いつも通り"あくまで特許"ではありますが、次世代のガソリンエンジンで今回の内容が採用されるのか気になるところですね・・・・。
今週気になった特許は以上となりますが、今後も気になった内容を随時取り上げていきたいと思います。