先日マツダが開催した「
かなり大きな反響を呼んでいるこの内容について現行モデルも含めた今後の展開を考えてみたいと思います。
6月17日、マツダは2030年に向けての新たな技術・商品の開発方針を発表する「
ラージ群モデルを中心とする電動化に関する内容が中心でしたが、マツダからのプレゼン終了後に設けられた(と思われる)質疑応答の時間に自動車ジャーナリストの桃田健史さんが「ロードスターは永遠に不滅ですか?」と質問。
〇桃田健史さんの記事
〇LOVECARS!TV!でも河口まなぶさんがこの質問について触れています。
この質問に対して説明会に出席されたマツダの廣瀬さんと小島さんはこのように回答。
・2030年までに全モデル電動化技術採用というロードマップにロードスターは含まれている。
・これまでロードスターを購入して頂いたお客さまには、eフューエルなどバイオ燃料を使った内燃機関を活用して、マツダとしてカーボンニュートラルを実現していきたい。
マツダは2018年10月に発表した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」で”2030年までに全モデル電動デバイス採用”と公表済みだったので、次期ロードスターも何らかの電動デバイス採用という可能性が以前から高かったのですが、今回マツダから正式に公表されたことでほぼ確実となりました。
電動デバイス採用と言ってもEVやマイルドハイブリッドなど様々な可能性があるのでまだ何とも言えないところですが大きな反響が出ています。
今回の情報を見て即座に「ロードスターがEVになる」と思い込んでしまう方がそこそこ見受けられるのは、経済メディアを中心に多い「電動化=EV化」という安易な報道の悪影響かな?という複雑な気持ちも・・・。
こうなると現行モデルを含めたロードスターの今後が気になるところですが、2019年からロードスター開発主査を担当されている斎藤茂樹さんがメディアの取材で今後に関する話をいくつかされてたのを思いだしたのでそれらを交えつつ今後の展開を想像してみたいと思います。
〇現行モデルの今後について
自動車雑誌「driver」2019年9月号に掲載されたマツダ特集で当時就任間もない斎藤さんは取材に対してこのような事を話されています。
Q:斎藤さんが主査に就任されたという事は次期型の開発がスタートする?
A:それは全く違います。マツダとしてデザインを強化しないといけないという事で前任の中山さんがデザイン本部へ戻る事になって話が来た。
(中略)
Q:現行モデルの改良について。
MAZDA3から始まった第7世代はSKYACTIV ビークルアーキテクチャーという新しい考え方で車を造っていますが、それらに使われている技術をND後半へ向けて入れたいと考えています。
GVC導入も考えているが、ロードスターの場合はジオメトリー等の関係から効果が無いどころか干渉してしまうこともある。
賛否両論あってシーンによっては入れた方がいい場合もあるが、違和感があるうちはやめておく。
開発は動いているのでしかるべきタイミングで入れたいと思います。
とにかく走りの質感をよくしたい。
もっとしなやかに、サスペンションももっと動かして。だけどピッチ挙動ではなくバウンス挙動にしてあげてサスは動いてるけどフラフラしないしビリビリしない。
次の改良で乗り心地はプライオリティの一番に置いています。
シートも換えます。
現行のネットシートはフィット感がある半面猫背っぽくなってしまうが、見た目は変わらないのに座った瞬間全然違う感じになると思います。
エンジンもそろそろSKYACTIV-G 1.5の改良をやろうかというのは自分的に思っています。
絶対的なパワーは十分だがトルクを上げればもっと走りやすくなる。
SKYACTIV-G 2.0に入れた技術を1.5でやるという考えもある、ただし改良でエンジンが重くなるのなら僕はやらないと思います。
齋藤主査個人の見解も含まれてる可能性がありますが、今後の改良について多くのアイディアを持っている事に加えてかなり具体的な例も挙げてお話されていました。
この雑誌が発売された後、ロードスターは2019年11月と2020年12月に商品改良を発表しているものの、ニュースリリース文を見る限りだとdriver誌でお話されていた改良内容は採用されていません。
〇2019年11月
〇2020年12月
新型コロナウイルス感染拡大などの影響から改良内容が変更された可能性も考えられますが、先に挙げた改良がまだ実施されてない状況を見ると現行型のモデルライフ後半はまだこれからと見る事も出来ます。
〇次期型ロードスター(NE?)について。
先に取り上げたdriver 2019年9月号において齋藤主査は次期型についても少しお話されています。
2019年の軽井沢ミーティングでも話しましたが、1.0ℓのSKYACTIV-Xにモーターを付けてハイブリッドというロードスターがあってもいいんじゃないかと。
ただ、パワーユニットは何でもいいと思う。EVでも全然問題ない。
ロードスターにEV⁉とか悲観的に聞かれますが、逆にロードスターが手本としてEVでもこんな気持ちのいい走りが出来るというのを造るのも一つのアイデアかなと。
その前にもっといいEVが出てくると思いますけどね。それが技術です。
次期型に向けて最大の課題は衝突安全性です。
世の中の基準がどんどん上がってそれをどうクリアするか。
マツダはどの車でもNCAP満点という方針でやってきてるが将来もロードスターでそれを目指すとエアバッグだらけになる。
今の技術だったら間違いなく戦車のような車になるので相当な技術開発をしないと。
電動化という情報が出てからバッテリーによる車両重量増加を懸念する声が多い印象ですが、齋藤主査の証言を見ると厳しさを増す衝突安全性を担保するのが最大の課題と捉えているようです。
先に触れた通り「電動化=EV化」と認識してる人も多いからか次期型でもロードスター本来の楽しさが維持されるのか心配される方も多い印象ですね・・・。
ただ、齋藤主査は他のメディアからの取材で「歴代モデルで受け継いできたコンセプトは変えない」「電動化はあくまで手段」「EVになってロードスターらしい楽しい走りができないのならEVはいらない。ファンの方々に失礼ですから」という回答もしいるので楽しさは維持されると信じていますが。
〇今後のロードスターの動向を予測。
現行型は発売開始から今年で6年が経過しましたが、スポーツカーのモデルライフは通常のモデルより長くなるのが一般的なのでまたしばらく販売を継続する可能性がかなり高いと思います。
次期型導入までのスケジュールで最も現実的なのは「齋藤主査が挙げられた改良ポイント候補を採用する商品改良を今年後半から来年くらいに実施」⇒「ロードスター35周年を迎える2024年に次期型公開」という流れでしょうか・・・。
これだとNC型とほぼ同じ10年弱販売という流れになるのでキリが良さそうに見えます(笑)
(NA型:約8年、NB型:約7年半、NC型:約10年弱販売)
ただ、2019年時点で次期型の開発は始まっていないという齋藤主査の話、ラージ群モデルを中心とする開発へリソースの多くが割かれる可能性や新型コロナウイルスや半導体不足の影響も含めて考えると開発期間が足りない予感も・・・。
そこで次に考えられるのは「NDロードスター用アーキテクチャーを継承した次期型”NE”を2022年~2023年頃に投入」⇒「各国の電動化政策の行方を見極めながら2030年前後まで販売」⇒「2030年前後に電動デバイスを本格採用した6代目を投入」という可能性。
これはNA型のアーキテクチャーを基本ベースにして登場したNB型と同じような形でND型をベースにNE型が登場するという流れ。
これだとNA型とNB型の関係と同じようにND型とNE型で多くのパーツが融通できるようになってユーザーにとってもメリットになりそうなので・・・。
ロードスター以外のマツダ車でも、初代から基本アーキテクチャーを継承してマツダ自ら”6.5世代”と位置付けている「2代目CX-5」、デザイン変更を伴う大幅改良を2回実施して2012年から約9年間販売されている「MAZDA6(アテンザ)」というような例が近年あります。
各国における2030年以降の電動化政策がまだまだ不透明なので、状況を見極めつつ本格的に電動デバイスを採用するならさらに次の”6代目(NFはアバルト124スパイダーに割り振り済みなのでNG型?)”になるのでは?という予想も頭に浮かびました。
2030年以降に販売されるロードスターがどうなるかが大きなポイントだと思いますが、マツダが発表した新たな技術・商品の開発方針にはEV・ハイブリッドに加えてe-fuelや水素の活用という可能性も含まれてるのでまだまだ先は読みにくい状況です・・・。
ただ、新たに発表された2030年におけるEV販売比率は25%で大半となる75%は引き続き内燃機関を採用する方針なのでこれまでのコンセプトを継承する事を考えると75%側に含まれる可能性が高い気がします。
特に将来の方針を頻繁に変えてきた欧州が今のままで電動化を進めるとも思えないので・・・。
マツダ自体もこれからラージ群モデルやロータリーマルチxEVなど次世代モデル導入が本格化していきますが、現行モデルも含めてロードスターの今後に引き続き注目しておきたいと思います。